「ノーカントリー」

ノーカントリー」(4月18日、MOVIXさいたま)

先日のアカデミー賞で作品賞を始めとした4部門を受賞。ぼちぼちロードショー期間も終わりであって、劇場にて10人ほどの観客の一人として鑑賞。関係ないけど、こんなんで大丈夫か、最近のシネコン?

コーエン兄弟の監督作って、実は「レディ・キラーズ」ぐらいしか見たことがなくて、出世作の「ファーゴ」も未見というだらしなさ。それはともかく、例によってできるだけ予備知識なしで劇場に出かけたのだが、うわー、なんじゃこりゃ(愕然) (以下、ネタバレはしないけど、未見の方はとりあえず見てから読むのをオススメしておく)


一見単純なストーリーながら、あちこちに説明の欠落があるために、見ているこちらが終始頭を使わせられるという脚本。これを巧みというのか、あざといというのか。淡々とした語り口から、突然テンポを落としたシーンの、まさに息詰まるほどの緊張感。陰惨な殺しのシーンが続く中に、ふっと漂う歪んだユーモアの香り。そして予想外にして暴力的なまでの結末の放り投げ方。いやー、こいつは参った。こんな映画が作れるとは思いもよらなんだ。

映画的には確かに画期的というか、「傑作」の部類に入る作品だとは思う。だがしかし、少なくとも心楽しい映画ではないし、あまりに乾きすぎてはいないか。同じように暴力を描いていても、例えばタランティーノの作品がどこかで映画的エンターテインメントを意識していて、それが「潤い」というか「救い」みたいなものをもたらしているのと対照的に思う。

それにしても、本作で助演男優賞受賞のハビエル・バルデム演じる殺人鬼が凄すぎる。演技も物凄いが、それ以前にこのキャラクター造形が強烈至極。何が怖いって、いわゆるサイコパスとかシリアルキラーみたいに、殺人そのものに倒錯的快楽を覚えるのではなく、ごくごく単純に「邪魔だから」人を殺していく姿が恐ろしいんである。そういう殺人者をアメリカは生み落としてしまった。そしてそういう国には、もう古き佳き時代を知る老人の住む場所は残っていない。それがすなわち原題の「No Country for Old Men」である。

映画の舞台となったのは1980年のテキサス。それから27年後、アメリカは、そして世界はどう変わったというのだろう。映画を見終えて、排除と不寛容の論理は、今や世界中に蔓延しているような気がしてきた。何から何まで強烈な一本(★★★★☆)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「アメリカン・ギャングスター」

アメリカン・ギャングスター」(3月7日、日劇PLEX)

リドリー・スコットとラッセル・クロウの組み合わせといえば「グラディエーター」だから、こちらの「アメリカン・ギャングスター」も見ておこうとお出かけ。

そのラッセル・クロウのお相手はデンゼル・ワシントン。方やマフィアのボスで、方やそのボスを追い詰める刑事なわけだが、雑誌やネットで映画の紹介文を目にするまでは、どっちがどっちの役をやるのか、正直見当がつかなかった(汗)

でまあ、結局のところデンゼル・ワシントンが冷酷なマフィアのボス役なわけだが、いやー、これは無理だ、いくらなんでも。演技は「悪辣、冷酷」でも、どうしたって「善人オーラ」がしみ出してきちゃうものね。いや、まあキャスティングの気持ちは分かるんである。劇中で描かれているのは、紛れもなく黒人の地位向上のための闘いだからだ。この映画では、その舞台がアメリカの裏社会だというだけだ。

劇中、デンゼル・ワシントンを追い詰めたラッセル・クロウが語っている。「イタリアン・マフィアの連中が何故お前を恐れたか分かるか。お前に「進歩」を見たからだ」

とまあ、そんなテーマを(勝手に)読み取るのはともかく、映画としてはいささか凡庸である。知っててやってるんだろうとは思うが、従前のマフィア映画からの引用めいたシーンも多いし、やはり少々オリジナリティに欠ける感は否めない。脚本も演出も、あれこれ考えすぎてしまったような気がする。残念賞(★★★)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「ナイトミュージアム」~お気楽春休みムービー

ナイトミュージアム」(ショーン・レヴィ監督、3月9日 TOHOシネマズ流山おおたかの森、試写会)

ここ数年、あちこちで次々にオープンしているシネコンだが、生活圏内にまたひとつ新たに「TOHOシネマズ流山おおたかの森」が完成。正式オープンは3月12日だそうだが、それに先だってのプレオープン企画の試写会が当たったので、いそいそと出かけてきた。

シネコン自体はどこも似たようなものだが、とにかく設備がいいのには感心する。こちらも背の高いハイバックシートに余裕の足元で、居心地は大変よろしい。さすがにまだ不慣れなスタッフもいるようではあったが、全体としては大過なし。

さて肝心の映画だが、えーと「ジュマンジ」や「ザスーラ」みたいな、フィクションがリアル世界に現れちゃった、というお話。観る前からなんとなく内容の見当はつくようなものだが、それはそれで、安心して楽しめた。全編を通しての、主人公のベン・スティラー(良く知らない)の芸達者振りが面白い。歴史ネタの他にも、いろいろと小ネタが散りばめられていて、気楽に楽しんで観ていられる。終盤、やや羽目を外し過ぎな気もしないでもないが、まあ、ファミリームービーとしては許容範囲だろう。

大御所ディック・ヴァン・ダイクが先輩警備員役で出演しているが、白髪の老人となった今も、かつてと同じいたずらっぽい笑顔での演技が素晴らしい。あんなふうに歳を取りたいもんである。どうせなら「チキチキバンバン」あたりを元ネタに、セルフ・パロディーでもやらせて欲しかったところだ。

とにかく気軽に楽しめる、春休み向けの楽しい一本。突っ込みどころは山ほどあるが、こういう映画に、あれこれ文句つけちゃいけません(笑)(★★★★)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

「それでもボクはやってない」~冤罪エンターテインメント(なわけない)

それでもボクはやってない」(周防正行監督、3月2日 MOVIXさいたま)

周防正行監督久々の新作であるが、どういうわけか巷の評判があまり聞こえてこない。微妙な不安を抱きつつ出かけてみたのだが、いろんな意味で予想を裏切る出来映えであった。

ストーリーは既に周知されている通り、至って単純。主人公の加瀬亮が痴漢に間違われるところから、警察での取り調べ、本人の否認、留置所での拘置、検察取り調べ、以下あれやこれや(順不同)で、起訴、裁判、判決と話は進む。ふぅ。周防監督らしく軽妙なタッチで拘留生活が描かれたりするあたりは、まだクスリと笑いながら見ていられるのだが、起訴から裁判へと話が進むにつれ、映画はどんどんドキュメンタリー色を強め、エンターテインメント性は希薄となっていく。エンディングに至っては、カタルシス皆無。驚いた。

恐らくこの映画には、監督自身が抱いた日本の司法制度への興味が、疑問から驚き、そして最後は怒りに変わっていく過程が、そのまま反映されているのだろう。そのせいか、映画としての方向性がイマイチ定まらないのが惜しい。が、これはこれで仕方ないのかもしれない。

「瓜田に沓を納れず李下に冠を正さず」という教訓の切実さが、とことん身に沁みる。大変な労作にして、深刻な問題提起の作である。まさしく文字通りの問題作。(★★★★☆)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

「ディパーテッド」~頑張れ、スコセッシ!

ディパーテッド」(マーティン・スコセッシ監督、2月1日 MOVIXさいたま)

この「ディパーテッド」は、予告を観た時に、どう考えてもつまらなそうな印象しか受けなかったのだが、スコセッシ=ディカプリオコンビの前作「アビエーター」が個人的にはなかなか好みの映画であったので、思い切って出かけてみた。

……惨敗でした。(で、以下ネタバレ気味だよん)
 
 
 
 
本作の下敷きとなった「インファナル・アフェア」を観ていないので、それとの比較とか関連についてはまったく分からないのだが、警察とマフィアがお互いにネズミを潜入させ合うという基本アイディアはいいとして、そのサスペンスの描き方が、なんとも物足りない。

恐らくは、個々のエピソードに深みが無くて印象に残らないために、映画全体が冗長な感じになってしまったような気がする。3時間余の長尺をほとんど飽きさせなかった「アビエーター」の演出とは、エライ違いである。終盤の展開は確かに意外性があってやや盛り上がるが、その後の決着の付け方がなんだか無理やりっぽい。そもそもあれじゃ、警察とマフィアが最初から全面戦争するのと、結果において変わらない気がするのだが。

ふと思ったのだが、あの構図だと、マフィア側が圧倒的に有利な気がする。だって、怪しい奴がいたら、とりあえず消しちゃえばいいんだもん(笑) まあ、それ故潜入捜査が成功した時の果実は大きいのだろうけれど。その分、マフィアが警察に潜入しても、得られるものはそれほど大きくないような気がする。ここは主要な捜査員を買収するほうが確実かと←おいおい

スコセッシのシャープな演出には感心したし、ジャック・ニコルソンの悪役振りや、警察側の豪華キャスト(マーク・ウォールバーグ、アレック・ボールドウィン、マーチン・シーン)など、見所は多いのだが、全体としてはとにかくぱっとしない。きっと興行的にもぱっとしないだろうなぁ…と想像しつつ、頑張れ、スコセッシ!と応援しておく。(★★★)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「エラゴン 遺志を継ぐ者」~燃えよ、ドラゴン

エラゴン」(シュテファン・ファンマイアー監督、1月3日 MOVIX柏の葉)

2006年12月にオープンした「ららぽーと柏の葉」内に同じく新設されたMOVIXへと出かけてみた。冬休み中ゆえ、混雑しているといけないと思ってネット予約して行ったのだが、これはほんとに便利なシステムである。もっとも、館内はおよそ半分以下の観客だったわけだが(汗)

さて、肝心の映画だが、CGの自然な表現は、もう究極まで行ってしまったのではないかと思わせる見事な出来。巨大なドラゴンがずしんと着地する際の重量感、周囲に巻き起こる砂埃とそれに揺られる草木、動くドラゴンに合わせた地表の影、等々、まるで実写しているかのようだ。そのドラゴンの背に乗って空を駆けるシークエンスは、ファンタジー好きなら誰もが思い描く通りの爽快感に満ちている。このドラゴンの造形と飛行シーンだけでも、一見の価値はあると思う。

しかしながら、ストーリーはやたらと凡庸。ありがちなオープニングから始まって、シナリオ的なサプライズは一切無し。原作は読んでいないのだが、過去のファンタジー名作群からの寄せ集めみたいなこのストーリーが、どうしてベストセラーになってるんだか、皆目検討がつかない。とにかくぬるい、ぬる過ぎる。

どうやら例によって三部作になるらしいので、今回はその第一弾。従って、あちこちに伏線というか、未解決な事柄が提示されてはいるんだが、この調子であれば、それらがどうなるかもだいたい予想できるというものだ。

見ていて安心なのは間違いないので、過去の名作からの引用(つーかパクリ)をあれこれ想像しつつ、とりあえずは見事な映像技術を楽しむのが正解である。ドラゴン好きで、一度乗ってみたい方には、とりあえず控えめにオススメ(★★★)

| | コメント (0) | トラックバック (1)

「敬愛なるベートーヴェン」~正統「ベトベン映画」

敬愛なるベートーヴェン」(アニエスカ・ホランド監督、12月30日 日比谷シャンテシネ)

年末、実演の「第九」には行けなかったので、気分だけでも味わおうと映画「敬愛なるベートーヴェン」を鑑賞。他にも用事があったので、有楽町に着いてすぐ席を確保しておいたのだが、指定の時間にシャンテに行ったら、ほぼ完売の模様。

冒頭、いきなり「大フーガ」が鳴り響いて、複雑かつアーティスティックなカット割りが続いたので、これはかなり気疲れする映画かとビビったのだが、そんなことはなくて、非常にオーソドックスかつ真面目なつくりの「伝記映画」であった。

「伝記映画」というか、実在の有名人物を描くとなると、どうしても観客側が既に持っているイメージによって、作品の評価がはっきり分かれてしまうと思うのだが、本作でのエド・ハリス=ベートーヴェンは、少なくとも僕にとっては安心して見ていられる造形だった。多くが認める天才でありながら、粗野で下品で横暴、かつ一面ではナイーブという、一般的にも納得のいくベートーヴェンだったのではないか。粗末な補聴器(ただの喇叭)を着けてピアノに向かう姿が、とても印象的だった。

全編中の白眉はもちろん「第九」初演シーン。およそ10分を超える実演場面は、見応え聴き応え充分で、音楽本来の素晴らしさともあいまって、演奏終了時には、思わず拍手しそうになってしまった。

従来の「ベートーヴェン像」を覆すよりは、むしろ補強する映画ではあるが、細部までこだわった(ように見える)美術と共に、一種のスタンダードたり得ていると思う。(★★★★)

参考記事:「敬愛なるベートーヴェン」(CLASSICA)

| | コメント (2) | トラックバック (1)

「硫黄島からの手紙」~無念

硫黄島からの手紙」(クリント・イーストウッド監督、12月27日 MOVIXさいたま)

父親たちの星条旗」と共に、「硫黄島2部作」とされてはいるが、これはもうまったく別の作品。「父親たちの星条旗」が、ある意味硫黄島から始まる物語なのに対して、「硫黄島からの手紙」は、硫黄島ですべてが終わる物語である。

圧倒的な戦力差を知りながらの、絶望的なミッション。麾下2万の兵力は、陸海軍で指揮命令系統が異なり、双方の反目さえある。兵士達は皆訓練不十分なうえ、劣悪な生活環境にあって健康状態も悪く、志気も低い。守備隊長としての栗林中将の苦悩はいかばかりであったか。並み以下の指揮官であれば、ロクな準備もせずに、安易な玉砕戦法に逃げ込んだであろう状況下で、彼は敵軍をして感嘆せしめる抵抗をしてみせた。

だがしかし、イーストウッドは栗林中将へのシンパシーとリスペクトを保ちつつも、冷徹な描写で日本軍が壊滅していく様を描いていく。敵弾に倒れる者、自決する者、あるいは戦闘ではなく疫病に命を奪われる者・・・ 無数のおびただし死が、ニヒリズムさえ漂う演出で展開される。これは監督が日本人ではないからできることなのか、あるいはイーストウッドの天才ゆえなのか。大仰なドラマやエモーショナルな演出などが無いからこその、痛いほど胸に残る作品だと思う。

それにしても、かつてこれほど兵隊達の「無念さ」が伝わる映画があっただろうか。60余年の時を経て、アメリカ人の手によって届けられたこの映画を、我々はしっかりと受け止めなければならない。必見(★★★★★)

| | コメント (2) | トラックバック (1)

「のだめ」Lesson4~エロイカなベト7

録画してあった「のだめ」第4回(Lesson4)をようやく見る。うーん、やはりどう考えても、録画してまで見るのは(以下略)

で、Sオケ&指揮者・千秋のデビューとなった「ベト7」であるが、原作では「エロイカ」。コンマス・峰発案のジミヘン弾き(?)は、第2楽章の葬送行進曲で出てくるので、実写でもエロイカを期待したのだが、うん、7番も悪くないぞ、全然。なんせドラマのテーマ曲だし。

こうやって見てみると、原作を尊重しつつ、ドラマはドラマでうまく話の流れをアレンジしているのがわかる。さすがにキー局の月9ってのは、力の入れ方が違うな。

さっきAmazonのミュージックカテゴリ(クラシック)を見てみたら、ベストセラーがほとんど「のだめ」関連になっているのに唖然。影響力あり過ぎである。ライトな「のだめ」ファンであれば、12月発売予定の「のだめカンタービレ ベスト100 (通常盤)」あたりがお得な選択っぽいが、クラヲタな方々としては、各自のオリジナルセレクションを作成するのが基本だろう。

ヲタの辺境にいる(ような気がする)自分としては、とりあえず所有している7番をセルフチェック:

クライバー/ウィーン・フィル
朝比奈/日本フィル(全集)
ノリントン/ロンドン・クラシカル・プレーヤーズ(全集)
ベーム/ウィーン・フィル(所有しているのはLP)

7番といえばやっぱりクライバーかなぁ、と思いはするが、ノリントンのハジケっぷりもSオケノリで、結構好きである。オリジナルセレクションに加えるとすれば、これかも←かなり本気

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「父親たちの星条旗」~「現場」の真実

父親たちの星条旗」(クリント・イーストウッド監督、11月1日 丸の内ピカデリー1)

「硫黄島での激戦を、日米双方の視点で描く」とかいうのが宣伝文句だったので、基本的に硫黄島だけが舞台かと思っていたのだが、そんなことはなくて、この映画はこの映画で、しっかりと独立した作品となっている。

有名な「硫黄島の星条旗」の写真が、銃後のアメリカにどんな影響を与えたか、そしてその写真に写された兵士たちが、どんな運命を辿ったか。そもそもあの写真自体、どんな経緯で撮影されたのか。そんな、ある意味シンプルな題材を、イーストウッドは驚くほど静かで丁寧な演出で描き出している。

描かれているのが史実(とされているもの)であるので、特にサプライズがあるわけでもなく、終盤に向けての大きなクライマックスも見当たらない。戦闘シーンは激烈かつ凄惨ではあるが、「プライベート・ライアン」的な生々しさが無いのも、イーストウッドの演出ゆえだろうか。硫黄島での場面が、全編モノクロのような色調で撮影されているのが印象的だった。

俳優陣は知らない連中ばかりで、すぐにわかったのはバリー・ペッパー(「プライベート・ライアン」)ぐらい。あと、「写真の英雄」の一人、インディアン兵士・アイラ役のアダム・ビーチは、どこかで見たなーと思っていたのだが、後で調べたら「ウインドトーカーズ」でサイパンで戦っていた。

タイトルから連想されそうな「好戦・愛国」的作品ではもちろんないし、同時に「反戦・厭戦」でもない。戦場という「現場」で、兵士達がどう戦い、何を見たのか。そしてそれが、決してそのままの形では故郷に伝わらないという現実。「現場にあった真実」を伝えようとしたこの映画は、かなり画期的なのかもしれない。戦争映画らしからぬ、しみじみと穏やかな後味の一本(★★★★☆)

*********

本編終了後、「硫黄島からの手紙」の予告上映。同じ硫黄島での戦闘がメインというだけで、映画自体の雰囲気はまるで違って感じられる。どんなふうに仕上がっているか、楽しみである。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

「カポーティ」~「冷血」

カポーティ」(ベネット・ミラー監督)を観た。(10月20日、MOVIXさいたま)

この映画が、世の中でどんな宣伝をされてるのか知らないのだが、普通に考えて、それほど人気を集める類の作品とは思えない。もしかして映画館には自分一人だったりして・・・と、やや怯えつつ出かけたのだが、金曜の夜に集まった観客は、およそ30人程度。おお、予想外の健闘かも(笑)

トルーマン・カポーティの伝記映画・・・みたいな知識だけで見に行ったのだが、内容的にはまさに「メイキング・オブ・冷血」(by #Credo)であった。

カポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンは、この作品でオスカーを受賞しているそうだが、単なる「そっくりさん」を越えた、実に見事な演技を見せている。事件の残虐性に魅せられ、犯人の人間性に惹かれながら、すべてを創作のためにコントロールしようとするカポーティ。映画終盤で見せる彼の「冷血」振りこそが、全編の白眉であり、同時に映画のテーマでもあるのだろう。

冷たく、ひんやりとした画質が、映画自体に漂う、えもいわれぬ底冷えを感じさせる。秀作。(★★★★)

*********

原作「冷血」を、たまたまこの夏に読んでいたので、映画鑑賞には好都合であった。やはりこの映画を楽しむには、「冷血」は必読だろう。(リンク先の新潮文庫は、佐々田雅子による新訳。「アウトロー探偵、バーク・シリーズ」での名訳が印象深いが、本作の訳もとても良い出来)

学生時代に親しかった先生(米文学専攻)が、「俺はカポーティはずっと好きだったんだが、「冷血」を読んで、文章の余りの冷たさに、いっぺんにあいつのことが嫌いになった」と語っていたのを思い出した。原書にも是非チャレンジ・・・は無理だろうなー。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

「のだめ」16巻ゲット&TVドラマ版「のだめ」スタート

「のだめ」の最新16巻を発売日にサクっとゲットしたのだが、いやあ、スーツ姿のオヤジが昼間から「のだめ」を手にレジに並ぶってのは、我ながらあまり目にしたくない光景である。

で、最新巻はほぼ全編が千秋の「新人常任指揮者奮闘記」であって、ストーリーとして実に面白い。新しい血(楽団員)の導入が、常にそのままその集団の活性化につながるわけでもなかろうが、まあ、そのへんはお約束の範囲内。

恐らくマルレ・オケは、今後千秋と共に名門復活への道を歩むであろうから、次巻はのだめのピアノがメインかな? まだまだ先が楽しみである。

*********

あちこちで話題騒然(?)のTVドラマ版「のだめカンタービレ」がついにスタート。リアルタイムで見られなかったので録画して見たのだが、いい歳したオヤジが録画してまで見るってのも(以下略)

でもまあ、フツーに面白かったかも。コミックを文字通りそのまま「実写化」したような作りで、TVドラマにありがちな余計な登場人物やエピソードは今のところ無し。ドラマ制作スタッフ、原作ファンを敵にまわすことだけは避けたかったに違いない(笑)

ドラマ自体も面白かったが、BGMにふんだんにクラシックが使用されているのも楽しい。某巨大掲示板とかでは早速スレッドが立ってるようだが、どの場面にどんな音楽が使われているかを聴く楽しみもある。あ、でも、冒頭のヴィエラ先生(マーツァル? マカル?)の振ってた曲は知らなかった。(ドヴォルザークの「チェコ組曲」らしい)

第一話でのメイン曲、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」(K448)だが、以前買ったお得10枚組「ファンタジスタ!モーツァルト」に、しっかり全3楽章が収録されている。山尾さん、さすがである。この曲をお探しであれば、新譜一枚分の値段で10倍楽しめるこちらがお得ですよー、と軽く宣伝しておく(笑) ドラマ第一回に出てきた「夜の女王のアリア」とかも入ってるしー。

つーわけで、しばらくは原作ファンとクラヲタ(重なる人も多そうだが)の話題の中心は、ドラマ「のだめカンタービレ」ということになりそうである。

| | コメント (0) | トラックバック (4)

「日本沈没」~「新釈・日本沈没」(ネタバレ注意!)

日本沈没」(樋口真嗣監督、9月1日有楽座)

映画の日、この夏なかなかのヒットとなっているらしい「日本沈没」を観に有楽町へ。開演ぎりぎりに到着したのだが、400席の劇場は、およそ6割程度の入り。7月中旬公開だから、この時期にこの入りはまずまずではないか。

何を隠そう、僕は本作のオリジナル版を、リアルタイムにロードショーで観ている。忘れもしない上野東宝、早朝から並んで座ったその回は、立ち見が出るほどの大入りだった。実に33年前のことである。(自分で書いてて軽くショック)

30年の歳月を経てリメイクされた本作だが・・・(以下、思い切りネタバレになりそうな予感。未見の方は近づかないほうが吉)
 
 
 
 
もう書いてもいい??
 
 
 
  
さて、観る前に予想していたのは、メインストーリーは原作(あるいはオリジナル版映画)を踏襲して、特撮シーンをパワーアップしたり、登場人物を現代風にしたり(女性が活躍する、とか)・・・というものだったのだが、基本的にはその通り。ただ、後半にオリジナルとは全く別の展開を盛り込み、それが全編のクライマックスシーンとなっていたのはサプライズだった。

まあ、寛大に捉えれば、こういう展開と結末もアリかな、という気はするし、映画的には盛り上げようがあるとは思うのだが、なんというか、結局のところ「リメイク版・日本沈没」ではなくて、「日本版・アルマゲドン」、あるいは「日本版・ディープ・インパクト」になってしまった、という感じがするのだ。「日本沈没」自体が、オリジナリティ溢れる純国産作品なのに、わざわざ「アルマゲドン」っぽいシーン(火山弾が名所旧跡に降り注ぐ、とか)や、ラスト近くに大地真央演じる首相代行が、被災者を前に声明を読み上げるシーン(「ディープ・インパクト」の大統領演説とほぼ同じシチュエーション)を再現する必要があったんだろうか?

原作の結末は、日本人がかつてのユダヤ人のように「流浪の民」化することを暗示していて、オリジナル映画もほぼそのニュアンスで終わっている。ここまで書いたから書いちゃうが、オリジナル版のラスト、沈みゆく日本を脱出する際に離ればなれになってしまった小野寺(藤岡弘)と玲子(いしだあゆみ)は、一人は灼熱の砂漠地帯を他の日本人難民と共に移動する貨物列車の中に、もう一人が吹雪の中を進む難民客車の中にいるというシーンになっている。故国を失った日本民族の、その後何世紀にも及ぶであろう苦難の時代を予感させて、子供心にも強烈な印象のラストシーンだった。

70年代、奇跡の復興を遂げた日本は、二度にわたるオイルショックで、それまで享受していた高度成長の脆さに気づかされた。その時代の不安に満ちた空気が、「日本沈没」という作品を生みだしたのだとすれば、平成の「日本沈没」を生み出したものは何だったのだろう? もしかしたらそれは、「どんな困難に直面しても、我々日本人は、最後は自分達でなんとかするのだ」という、根拠無き自負なのではないか・・・と思いついて、なんだか気が重くなってきた。

映画自体の出来は凡庸。自然災害シーンは確かに素晴らしかったが、30年前、CGなど無かった時代にミニチュア特撮で作り上げたオリジナル版を考えれば、表現がリアルになっただけにすぎない。製作者の考え方だとは思うが、原作でもオリジナル版でも中盤のクライマックスとなっている東京大地震が描かれなかったのも、ちょっと肩透かしといった感じだ。いろんな意味で中途半端(★★★)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」~最強夏休み映画その2

パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」(ゴア・ヴァービンスキー監督、8月27日MOVIX三郷)

予習も済ませ、今度は劇場にてこの夏最大のヒット作である本作品を鑑賞。予想通り前作のエピソードをうまく使っていて、リピーター(?)を喜ばせる仕掛けが随所にある。予習しておいて大正解であった。

本作も全編アクションシーンの連続なんだが、前作以上にコミカルな場面が増え、大笑いしながら壮絶なアクションを楽しめる。もっとも、いくつか話の本筋とは無関係に、無理にアクション場面にしたてたような箇所もあったのが玉に瑕。特に前半三分の一ぐらいは、ストーリーの説明にもたつきがあって、スピード感が失われてしまったのが残念だった。

まあでも、今回の敵役は最初から化け物なので分かりやすいし、ダンジョンでおなじみのクラーケンも大活躍するし、ウハウハと楽しんで見ていられる。怪物達の乗る船の名が「フライング・ダッチマン号」とか、くすぐりどころも満載で、最後まで飽きさせない。

エンディングが中途半端なのは、三部作の真ん中だから仕方ないところ。ここまで見てしまったら、第三作も見ないわけにはいくまい。次回作が楽しみである。(★★★★☆)

*********

今頃になってヴァービンスキー監督の他の作品をチェックしたみたのだが、なんとなんと、あの傑作コメディ「マウス・ハント」の監督ではないか。「マウス・ハント」、未見の方は是非ご覧のほどを。クリストファー・ウォーケンが最高っす。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」~最強夏休み映画

パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち コレクターズ・エディション

パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち」(レンタルDVD)

この夏一番のヒット作らしい「パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト」を、娘を連れて見に行くことになったのだが、肝心の前作を見てなかったので、予習用にレンタル。

そもそもなんで前作を見ていなかったかといえば、このタイトルのせいだ。だって、「カリブの海賊」だよ? あのディズニーランドのアトラクションの。あれが映画になって、面白いなんてことがあるんだろうか?・・・などと思って、本作も正直眉唾で見たのだが・・・

あら、びっくり。面白いじゃん(笑)

そうかそうか、要するに「海賊版インディ・ジョーンズ」なわけだ。とにかく、謎の金貨をめぐる争奪戦というメインストーリーがしっかりしているので、映画の筋を追いやすいのがいい。メインキャラクターはジョニー・デップ演じるジャック・スパロウなわけだが、ヒロイン・エリザベス(キーラ・ナイトレイ)のロマンスのお相手が、ジャックではなく鍛冶屋のウィル(オーランド・ブルーム)という配置も面白い。

海戦シーンを始めとした戦闘場面の演出も冴えてるし、一対一の剣戟シーンでの、スピーディーな細かいカット割りが効果大。CG(VFX)の用い方も気が利いている。まさしくエンターテインメントに徹した大娯楽作。難しいことを考えずに、ハラハラドキドキ2時間強を楽しめる。最強の夏休み映画である。(★★★★☆)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

マコ・イワマツ死去

ちょっと前のニュースだが、マコ・イワマツが亡くなった。

マコの出た映画、どんなのを見てたかなー・・・と思ってCinemaScapeで調べてみたら、出演作こそそこそこあるものの、僕が観て印象に残っているのは、「砲艦サンパブロ」と「タッカー」、それに山本五十六を演じた「パールハーバー」くらいだった。となると、やはり「砲艦サンパブロ」の印象が強烈だったということなんだろう。

映画でのクレジットは、いつも「Mako」だったと思う。日系人俳優だからといって、日本人の役を演じたわけではなく、「サンパブロ」での中国人労働青年みたいに、東洋人としての役柄全般をこなしていた。それでも、僕が観た映画のクレジットに「Mako」と出てくるのを見ると、ちょっぴり誇らしい気分になったのはなぜだろう。

マコ・イワマツ、2006年7月21日、食道がんのため72歳で死去。合掌。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「ポケモンレンジャーと蒼海の王子マナフィー」

ポケモンレンジャーと蒼海の王子マナフィー」(7月23日、MOVIX三郷)

夏休み恒例のポケモン映画、今年も子ども達を連れて観に行ってきた。(以下、ネタバレじゃないけど、微妙に内容に触れるので、未見の方はそのつもりで)
 
 
 
ここ何作かは、出来の良さは認めるものの、どうにも宮崎アニメの影響というか、意識し過ぎっぽいところが気になっていたのだが、本作はオリジナリティー溢れる秀作。大いに評価したい。

ポケモンレンジャーが絡むスリリングなオープニングから、サトシ達とサーカス団の出会いという流れもいいし、マナフィーの卵争奪戦から水中宮殿での活劇と、アクションシーンも秀逸。CGもふんだんに使われるのだが、メカや建造物を描くのに用いているため、独特の質感が出て良い効果が得られれている。

欲を言えば、宮殿を目指す船旅のシークエンスがやや退屈なのと、クライマックス場面でのサトシの活躍に、彼のポケモン達も加えて欲しかったというところか。

・・・などと大のオトナがマジメに観てしまうくらい、内容はしっかりしていた。もっとも、肝心の子ども達は、映画そのものよりも、前売り券についてきたWミッションとやらに心奪われている様子であったのだが。

というわけで、シリーズ中でも上位に入る作品だと思うのだが、映画館は日曜の午後にもかかわらず、半分程度の入り。シネコンが増えてスクリーン数と客席数が増えたこともあると思うのだが、実際はどうなんだろう?(★★★★)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「嫌われ松子の一生」~下りだけのジェットコースター

嫌われ松子の一生」(7月14日、TOHOシネマズ六本木)

ひょんなことから招待券(のようなもの)が舞い込んできたので、無駄にするのももったいない・・・と六本木ヒルズへ。どんな映画かまるで見当が付かずに観たのだが・・・

びっくり。

いや、「良かった」とか「感動した」とか「泣いた」とか「笑った」とか、そういう感情的なリアクションより先に、こういう映画に仕立て上げちゃうこと自体にびっくりした。なんというか、「裏メリーポピンズ」とか「裏シンデレラ」とか、そういうチープさと悪趣味さ、でも仕上がりはとっても上品という、不思議な映画体験であった。

愛すべき容姿と心を持っていながら、中学教諭時代の事件をきっかけに、ただただ転落していく松子。彼女の転落人生は、まさにジェットコースター状態(ただし下りのみ)で、とてつもなく悲惨だ。人生の様々な場面で、常に最悪の選択をしてしまうその姿は、情けなくて哀しいのだが、でもどこかおかしくて明るさがある。そんな松子を23歳から53歳まで演じる中谷美紀は、迫力満点の大熱演。脇役陣もヘンなのばっかりで、カメオ出演の連中も含め、なんだかみんな楽しそうだ。

過剰な色彩に過剰な音楽は、映画館でこそ楽しめる。少なからずこの映画が気になっているのなら、DVDより映画館での鑑賞が圧倒的にオススメである。びっくり(★★★★)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

「グッドナイト&グッドラック」~硬派ドラマ

グッドナイト&グッドラック」(6月1日、TOHOシネマズ六本木)

映画の日、気になっていた本作を観に六本木ヒルズへ。公開からほぼ一ヶ月、恐らくは終映も近いと思われるのだが、小さいハコながらもだいたい7割ぐらいの入りか。

例によって、あまり予備知識を仕入れずに観たのだが、こういう実話ベースの作品を観るには、やはりある程度の予習は必要だったかも知れない。うんと昔に読んだハルバースタムの、「メディアの権力」に出てきたような名前を思い出しつつ、映画を観ていた。

ストーリーは単純で、マッカーシーの赤狩りがエスカレートしていく中、それに立ち向かった実在のニュースキャスター、エド・マロー(CBS)と彼のスタッフの闘いを描いている。

監督はジョージ・クルーニーで、マローの番組プロデューサー役でも出演している。全編をモノクロで撮り上げているが、そのせいでふんだんに用いられる当時のニュース映像が、違和感なく本編とシンクロしている。奇を衒わない手堅い演出ながら、適度に力が抜けているあたり、新人監督らしからぬ才能である。

映画が扱っているのは史実だから、マローの告発は赤狩りの機運を転換させるきっかけとなり、やがてはマッカーシー自身に失脚をもたらすことになる。ぱっと見、メディアの勝利だ、正義は勝つ、自由を守る戦いは偉大だ、みたいな映画に見えなくもないのだが、もちろんそんな単純なことではない。赤狩りに抵抗し、勝利したはずのメディアは、いつの間にか「モノ言わぬ」存在に戻ってしまっている・・・そんな失望感が、映画全体から漂ってくる。

「報道に真の中立などあり得ない」、「問題は(メディアの)我々自身にある」、「テレビが笑いと娯楽しか提供しないなら、そんなものは滅んで当然だ」等々、番組内で発せられるマローのコメントの数々は、そのまま現在のマスメディアに対する警告として受け止めるべきだろう。夜の9時台、10時台に、ニュースショー以外には硬派の報道番組が放送されていない現状に、我々はもっと危機感を持つべきなのかも知れない。

まさしく硬派の一本。佳作である。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

「タイフーン」~大型で弱い勢力

タイフーン」(4月19日、MOVIX亀有)

韓国映画の名作の一つ、「友へ チング」のクァク・キョンテク監督が、再びチャン・ドンゴンと組んで送る、アクション大作である。

うーん、なんというか、実にもったいない感じがする。基本のストーリーは悪くないし、主演二人(チャン・ドンゴンとイ・ジョンジェ)も熱演、アクション場面の演出は見事だし、何より全体のテンポが良く、アッという間に2時間ちょっとの時間が過ぎてしまう。良くできてはいる。でもでも、なんだかあちこちいろいろ物足りないのだ。

思うに、いくつもの素材を取り込みすぎたのではないか。海賊シン(チャン・ドンゴン)と、彼を追う海軍将校カン・セジョン(イ・ジョンジェ)の姿を中心に、シンと姉との悲惨な過去、セジョンの追跡行と、やがて彼がシンに対して抱く同情と友情が描かれ、それに加えて、大小様々な素材が盛り込まれており、結局のところそれらが消化不良気味なのだ。あと20分程度尺を伸ばして、説明不足だったエピソードを丁寧に描いてくれたら、相当な傑作になったような気がする。

映画としてはイマイチ感が漂う本作だが、主演二人の熱演は見事。チャン・ドンゴンは、恐ろしいほどに役に没入しており、さすがの貫禄。一方のイ・ジョンジェは、モデル出身らしいスマートな体躯を生かし、エリート将校役を好演。立ち姿の美しさが印象に残った。

大型ではあるが、案外勢力の弱い台風といった印象の作品であった。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

「ウォレスとグルミット:野菜畑で大ピンチ!」~傑作、大冒険活劇

ウォレスとグルミット:野菜畑で大ピンチ!」(ニック・パーク監督、4月10日MOVIX三郷)

ずいぶん以前、「チキンラン」の感想を書いた時に、、「ウォレスとグルミット」の長尺劇場版を観てみたい、なんて書いたのだが、なんと本当にそれが実現してしまった! 期待度満点で映画館に出かけたのだが、これはもうシリーズ中の最高傑作。「ハウルの動く城」を押しのけての、アカデミー賞(長編アニメーション部門)受賞もうなずける。

今回の二人は、「害獣駆除」を請け負っているのだが、とにかくもう、冒頭のスクランブル出動シーンからワクワクドキドキ。2号搭乗のシークエンスに心躍らせたサンダーバード世代であれば、感動間違い無しの名場面だ。ギミック満載のスーパーハイテクアナログ装置(笑)の数々、スピーディーな展開、びっくりするほど細かなリアリティと、最初の5分でこの映画の虜になってしまった。

ストーリーもしっかりしていて、謎の生物「ウサギ男」のミステリ、美しき(?)貴婦人とのほのかなロマンス、そしてスリルとサスペンスに満ちた「ウサギ男」との決闘からクライマックスと、間断とするところがない。まさに本家本元、英国流の大冒険活劇である。

例によって小ネタもそこら中に散りばめられていて、それらを見つけるのがまた楽しい。たとえばこんなシーンがある。村で開催される「巨大野菜コンテスト」出品用の野菜に、グルミットが音楽を聴かせるのだが、そこで流れるのがホルスト「惑星」から「金星」の美しい調べ。音楽はLPレコードから聞こえてくるのだが、そのレコードの反り具合がまた泣かせる。で、そばに立てかけてあるレコードのジャケットには、「The Planets」ではなくて「The Plants」と書かれている、といった具合(笑)

これら小ネタの数々を確かめるためだけでも、将来発売されるDVDを買う価値はある。DVD化が待ち遠しい←早すぎ

オトナもコドモも楽しめる映画ではあるが、恐らく最もこの映画を楽しめるのは、サンダーバード世代の映画好きオヤジかもしれない・・・って、自分のことです、はい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

ついでに「恋愛小説家」

恋愛小説家

アバウト・シュミット」を見た翌日の晩、BS-hiで「恋愛小説家」(ジェームズ・L・ブルックス監督)が放映された。この映画は以前見ているので、再見するつもりはなかったのだが、冒頭数分を見たらやめられなくなり、そのまま最後まで見てしまった(眠)

でも、見直して良かった。前回見た時よりも、もっと楽しめたような気がする。

ジャック・ニコルソンの偏屈さ、ヘレン・ハントのくるくる変わる心情と表情、グレッグ・ギニアのゲイっぷり、そして犬のバーデルの名演技。隅々まで神経の行き届いた、ハリウッド的に最良のコメディである。

今回見直してみて、特に台詞の面白さに感心しきり。有名な人生最高の褒め言葉、「君は僕をいい人になろうという気にさせる(You make me want to be a better man)」なんか、しっかり覚えて、いつか英語で使ってみたい←誰に?

おお、そうか、こういう時こそDVDだな。字幕を英語にしてスロー再生すれば、少しはマネできるかも(笑) うう、買いたくなってきた・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「アバウト・シュミット」~アバウト・ニコルソン

アバウト・シュミット
アバウト・シュミット」(アレクサンダー・ペイン監督、レンタルDVD)

(以下、微妙に内容に触れるので、未見の方はご注意を)
 
 
 
長年勤めた保険会社を定年退職したシュミット(ジャック・ニコルソン)だったが、退職直後に妻が急死、いきなり引退後のプランが狂ってしまう。ほどなくひとり娘の結婚式がやってくるのだが、フィアンセは冴えないウォーターベッドのセールスマン。娘の結婚を心から喜べない彼は、予定外の一人暮らしの中で、少しずつ心の均衡を失いかけてゆく・・・

定年退職をきっかけに、次々と起きる予想外の出来事に振り回されるシュミットの視点で、映画は最初から最後まで語られていく。徹頭徹尾「シュミットについて」の物語であり、同時にそのシュミットをニコルソンがどう演じるかを楽しむ映画だと思う。

積み重ねられて行く小さなエピソードの数々が、それぞれ切なくもあり、時に情けなく、時にやるせない。退職した途端に「誰でもない人」になってしまったことが、どうしても受け入れられない主人公。頼るべき妻を亡くし、ひとり娘は、自分が気に入らない男と結婚してしまう。自分の思い通りになるはずの退職後の人生が、何一つ思い通りにいかなくなってしまう悲哀を、ニコルソンの名演と、落ち着いたタッチの演出が描いていく。

あるがままをいったんは受け入れたシュミットだが、「結局のところ、自分の存在にはどんな意味があったのか」という問いかけを自らに対してするまでになってしまう。妻も娘も失い、生きていく希望を失いかけたシュミットが、思いつきで始めた里親プログラム(フォスター・プラン)を通じて支援している、子どもからの礼状を読んで、深い感動に包まれるシーンが印象的だ。

淡々と、でもしみじみと。ニコルソン抜きではありえない作品。

*********

娘のフィアンセの母親役で、キャシー・ベイツが出演しているが、見ててびっくりの、いわゆる「体当たり演技」を披露(汗)  女優魂はさすがだが、こちらとしては、まあその、(以下略)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「耳をすませば」を半分だけ見た

耳をすませば

帰宅してテレビをつけたら、「耳をすませば」をやっていたので、食事しつつ最後まで見てしまった。まあその、感想はパスしとくとして(笑)、ふと思ったこと。

自分の孫ぐらいの歳の女の子に、「あなたは素敵です」と言えるようなじーさんになりたい。

……

……

……ダメかな?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「PROMISE」~材料は豪華だが

PROMISE」(チェン・カイコー監督、3月1日 ルーブル丸の内)

久しぶりにここの映画館に行ったのだが、なんと劇場名に「サロンパス」がついていて、館内では本当にサロンパス関連製品が陳列されていた。おまけにこの日は、試供品として「美容液マスク」まで配られていたので、渡されるままにもらってしまった(笑)

映画の日ではあったが、最終回の観客は、座席の6割程度。しかし、そのほとんどが女性観客だったのにはびっくり。みなさん、誰をお目当てに観に来ていたんだろう?

さて、肝心の映画である。「さらばわが愛/覇王別姫」の印象が強烈なチェン・カイコーが、果たしてどんな映画を撮ったのか・・・と大いに期待しつつ観たのだが、うーん(汗)

なんというか、例えて言えば、一流の料理人(監督)が、各国から選び抜いた材料(俳優)を使って、調味料(ワイヤーアクション、CG)をたっぷり使って料理を作ったら、できあがったのは肉野菜炒め定食デザート付きでした、みたいな感じだろうか。あるいは、きれいな絵の具をいっぱい使ってみたら、混ぜてるうちにグレーになっちゃいました、みたいな。

メインの登場人物四人(真田広之、チャン・ドンゴン、ニコラス・ツェー、セシリア・チャン)はそれぞれ好演しているが、中でもニコラス・ツェーが良かった。冷酷非道でありながら、心の奥底で愛と信頼を求め続ける複雑な人物を好演している。

真田広之も、「大将軍」と称えられ、恐れられながらも、実際には小心で小狡い小人物の姿を演じて見事。また、風よりも早く走る奴隷役のチャン・ドンゴンは、無知で素朴な一奴隷を演じていて、少々頭の弱そうな朴訥とした役柄が、本人の良さに合っている。

アクションシーンやチャン・ドンゴンの疾走シーンなどは、迫力を通り越して、ほとんど荒唐無稽だが、チェン・カイコーにしてみれば、想像したとおりの絵をスクリーンに描きたかったのに違いない。そのへんを大目に見てあげれば、悲しくも美しい運命のドラマがおぼろげながらも見えてくるように思う。

扱う素材が豪華過ぎたせいか、かなり散漫なストーリー展開になってしまったのが惜しい。映画としてのデキは、残念ながら今ひとつといったところ。食材が高級なだけでは、美味しい料理は作れない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「ホテル・ルワンダ」~真のプロフェッショナルとは

ホテル・ルワンダ」(テリー・ジョージ監督、2月17日 シネカノン有楽町

k-tanakaさんのところで本作の日本公開運動のことを知って以来気になっていたのだが、ようやく観ることができた。ここシネカノン有楽町では、朝イチの回と最終回に本作を上映している。(僕は最終回を観たのだが、時間的にレイトショー割引だと思いこんでいたら、しっかり1,800円とられた。がっくし)

以下、例によって作品の内容に触れるので、未見の方はご注意を・・・
 
 
 
主役のドン・チードルが、とにかく素晴らしい。自分と家族を襲う理不尽な暴力に対して、彼が持つ武器は、その機転と弁舌だけなわけだが、それはどちらも外資系四つ星ホテルの支配人という、自分の職業によって培われたものだ。家族とホテルの客を守るために、必死に頭を使う主人公を、チードルは見事に演じている。

彼のホテルが危機に瀕し、その機能を失いかけた時、集めた従業員達にこう告げるシーンがいい。「ここは四つ星ホテルなんだ。それを維持することが命綱なんだ」  難民キャンプではなく、外資系の四つ星ホテルとしての営業を続けるからこそ、ぎりぎりのところで暴徒から身を守れると考えた彼は、逃げ込んだ難民達を「ゲスト」と呼び、払われるあてのない部屋代の請求書を彼らに渡す。

絶望的な状況において彼を支えるのが、自らの職業におけるプロフェッショナリズムだというのがいい。それはきっと、どんな仕事でも同じ事なのだろうと思う。自分の仕事でプロになることこそが、異常事態や危機的状況を耐え抜く力の源泉になるのだ。(だからニートの増加=職業的プロフェッショナルの減少が問題となるのだ・・・というのは、また別の話)

脇役も人選が良く、堅実な演技を見せる。国連平和維持軍指揮官のニック・ノルティが、インタビューで記者に「虐殺を止めないのか」と聞かれ、「我々は平和維持軍(peace keepers)だ、平和創造軍(peace makers)ではない(だから介入しない)」と言い放つシーンが強烈。報道カメラマン役のホアキン・フェニックスはやや影が薄いのが、少々残念ではあった。

ホテルチェーンのベルギー本社社長役で、ジャン・レノが出ているが、クレジットには名前が出てこない。カメオ出演にしては、ちゃんと台詞もあったし、なかなか味のある役どころだったから、出演者として宣伝しても良さそうに思えた。

演出は、注意深く直接的な残虐シーンを排除しているが、そのぶん観客の想像力に訴える要素が強く、かえってルワンダ内戦の悲惨さが伝わってくる。部族が違うというだけで、ただただ殺戮される理不尽さと恐怖。昨日までの隣人や同僚が、突然自分とその家族に刃物や銃を向ける状況など、想像するだけで身の毛がよだつ。

そんな悲惨な状況を舞台にしつつ、この映画は一種の脱出行として、エンターテインメントとしても成立している。チャンスがあれば、是非ご覧になることをオススメしたい。

| | コメント (0) | トラックバック (4)

「男たちの大和」~正統派カドカワ映画(え?)

男たちの大和/YAMATO」(佐藤純彌監督、2月1日、丸の内TOEI1)

正月映画落ち穂拾いシリーズその2(笑) カドカワ映画で戦争モノとなっては、これはもう劇場の大画面で観るしかあるまい、ということでお出かけ。なんせ映画の日だし。

えーと、以下、ネタバレというか、内容に触れるので、その旨一応お断りしておく。気にする人はいないと思うけどさ。
 
 
 
いやー、しかし困ったな・・・というのが見終わっての感想だった。素材、俳優、演出(音楽、CG含む)それぞれに、良い部分と悪い部分が同居していて、どうにも落ち着きの悪い感じである。

まず、リアルスケール(だよな?)の大和甲板だが、これはさすがに素晴らしい。それに連なる艦橋や機銃銃座も良くできてるんだが、片側側面からしか写してくれないので、肝心の戦闘場面でのスケールが小さくなってしまう。訓練中の体操シーンや、特攻直前の訓辞を聞くシーンなどで、セットの大きさを生かしたショットがあるだけに、戦闘シーンにもワンカットでもロングショットが欲しかった。

俳優陣もおおむね良好。特に反町隆史が良かった。ある意味、彼もパターン化された存在ではあるのだが、姿勢そのものや、立ち居振る舞いの品の良さなどは、周囲とは別格な感じがして、大いに見直した。ま、演技はフツーだけどね(笑)

良く分からないのは、例えば長島一茂で、気の利いた台詞の多い、なかなかオイシイ役なんだが、彼の大和での階級や位置づけが映画で説明されないので、「(先陣となって散る、)本望じゃないか」なんていう決め台詞が、どうにも浮いてしまっている。司令官役に渡哲也を引っ張り出したのだから、あの役に一茂は、さすがに荷が重かったと思う。

分からないといえば、現代パートの鈴木京香も、大和乗員(下士官)の生き残りの娘にしては、ちょっと若すぎるのではないか。また、大和沈没地点に行きたいというのはいいとして、記念の日の前日に、突然枕崎にやって来て「船を出してください」ってのはないだろう。

久石譲の音楽は、悲壮美をたたえた雄大なもの・・・はいいんだが、どうにも使い方がぱっとしない。それと、エンディングの長渕剛は、ちょっとカンベンしてくれ、って感じ。

しかし、最大の弱点は、基本シナリオにあると思う。劇中、あたかも仲代達也の回想みたいな感じで話が進むのだが、そうなると、多視点での描き方そのものがちょっとオカシイことになる。(回想だったら、フツー視点は単一)

とまあ、こんな感じで、悪くはなかったのだが、物足りない部分も多々。泣かせどころももちろん多いのだが、「はい、ここで泣いてください」といった感じの演出では、どうにも居心地が悪い。これだけの材料と資金でこのデキじゃ、さすがにもったいない。

収穫といえば、結局のところ派手なドンパチを大画面と大音響で味わえたことぐらいか。カドカワ映画は、やはり映画館で観てこそ、鑑賞に耐えうるということが、個人的には証明された。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」~青春グラフィティ

ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(マイク・ニューウェル監督、1月29日、MOVIX三郷)

諸般の事情により、正月映画をことごとく見逃してしまっていたのだが、子ども達にせがまれて、落ち穂拾い(笑)

実は前作の「アズカバンの囚人」を見逃していたのだが、とりあえず本作は本作で、単品作品としてちゃんと楽しむことができた。

本シリーズ、全然原作を読んでいないので、あくまで映画だけを観ての感想である。

第一作当時からすっかり成長してしまった出演者達だが、作品間のブランクを感じさせることもなく、キャラをしっかりと守っているのにはひと安心。多少自我めいたものが芽生えているのも、同一シリーズのファンにとっては、観ていて楽しめることだろう。

ストーリーの中心は、ホグワーツを舞台に行われる、魔法学校三校対抗戦の模様なわけだが、各種目の描写は迫力満点で、これは確かに面白い。しかし、冷静に考えると、この対抗戦の基本ルールが良く分からない(笑) 最終種目の勝利ルールは分かるけど、これだと、それ以前の二種目が、まるで無意味になってしまうような気がするんだが・・・ もしかしたら原作もそうなのかもしれないが、このあたり、もうちょっと説得力のある設定にして欲しかった。

サブストーリーとして、ハリー達の恋愛模様チックな人間関係がある。誰が誰に気があって、それなのに、あっちから声がかかるとふらっと傾いたり、こっちに声をかけたいのに、そうしなかったり・・・という感じで(←わかんねーよ)、まあ、なんというか青春しちゃってるわけである。このあたりの描写は、映画ならではといったところ。唐突だが、ロン君、僕は君の味方だぞ。

シリーズ物としての安心感に、でんと乗っかった感のある本作であるが、はてさて、今後はどんな展開を見せるのだろうか。映画そのものよりも、シリーズの方向のほうに関心が向いてしまうのであった。

ところで、魔法学校三