「ノーカントリー」
「ノーカントリー」(4月18日、MOVIXさいたま)
先日のアカデミー賞で作品賞を始めとした4部門を受賞。ぼちぼちロードショー期間も終わりであって、劇場にて10人ほどの観客の一人として鑑賞。関係ないけど、こんなんで大丈夫か、最近のシネコン?
コーエン兄弟の監督作って、実は「レディ・キラーズ」ぐらいしか見たことがなくて、出世作の「ファーゴ」も未見というだらしなさ。それはともかく、例によってできるだけ予備知識なしで劇場に出かけたのだが、うわー、なんじゃこりゃ(愕然) (以下、ネタバレはしないけど、未見の方はとりあえず見てから読むのをオススメしておく)
一見単純なストーリーながら、あちこちに説明の欠落があるために、見ているこちらが終始頭を使わせられるという脚本。これを巧みというのか、あざといというのか。淡々とした語り口から、突然テンポを落としたシーンの、まさに息詰まるほどの緊張感。陰惨な殺しのシーンが続く中に、ふっと漂う歪んだユーモアの香り。そして予想外にして暴力的なまでの結末の放り投げ方。いやー、こいつは参った。こんな映画が作れるとは思いもよらなんだ。
映画的には確かに画期的というか、「傑作」の部類に入る作品だとは思う。だがしかし、少なくとも心楽しい映画ではないし、あまりに乾きすぎてはいないか。同じように暴力を描いていても、例えばタランティーノの作品がどこかで映画的エンターテインメントを意識していて、それが「潤い」というか「救い」みたいなものをもたらしているのと対照的に思う。
それにしても、本作で助演男優賞受賞のハビエル・バルデム演じる殺人鬼が凄すぎる。演技も物凄いが、それ以前にこのキャラクター造形が強烈至極。何が怖いって、いわゆるサイコパスとかシリアルキラーみたいに、殺人そのものに倒錯的快楽を覚えるのではなく、ごくごく単純に「邪魔だから」人を殺していく姿が恐ろしいんである。そういう殺人者をアメリカは生み落としてしまった。そしてそういう国には、もう古き佳き時代を知る老人の住む場所は残っていない。それがすなわち原題の「No Country for Old Men」である。
映画の舞台となったのは1980年のテキサス。それから27年後、アメリカは、そして世界はどう変わったというのだろう。映画を見終えて、排除と不寛容の論理は、今や世界中に蔓延しているような気がしてきた。何から何まで強烈な一本(★★★★☆)
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