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「ブラッカムの爆撃機」

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの

ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの
」(ロバート・ウェストール、金原瑞人訳)

書店で見かけ、宮崎駿の表紙と、巻頭と巻末の同じく宮崎駿の解説(?)マンガに惹かれて本書を購入。

巻頭の宮崎駿「タインマスへの旅・前編」を読んでから本文へ。表題作「ブラッカムの爆撃機」に「チャス・マッギルの幽霊」、「ぼくを作ったもの」の三編が続き、その後に「タインマスへの旅・後編」、そして最後に評伝「ウェストールの生涯」という構成である。

第二次大戦中の、英国空軍によるドイツ爆撃というと、映画「メンフィス・ベル」(あれは米空軍のB-17での爆撃行だけど)あたりを連想してしまう。「タインマスへの旅・前編」での表題作紹介を読んでも、同じ種類の物語に思えるのだが、「ブラッカムの爆撃機」は中盤から思わぬ展開を見せる。

アイルランド人のベテラン機長と、彼に率いられた新米飛行兵達の造形は見事だし、旧式のウェリントン爆撃機(通称「ウィンピー」)による飛行と爆撃の描写も素晴らしい。そして中盤で起こる事件とその後の物語の恐ろしさ。短いながらも中味の濃い秀作である。

「チャス・マッギルの幽霊」は、同じく大戦中に親戚の旧家に疎開した少年と「幽霊」との出会いの物語。ただの怪談で終わるかと思いきや、ジャック・フィニイの時間もの小説のように、鮮やかにして心温まるラストが待っている。こちらもなかなかの佳品。

もうひとつ、「ぼくをつくったもの」は、自伝的色彩の濃い作品で、「ぼく」と祖父との思い出の一コマが、宮崎駿言うところの「失われたものへの哀惜」に満ちた筆致で描かれる。大きな事件は無いけれど、しみじみとした余韻の残る一編だ。

宮崎駿の「タインマスへの旅」は、作品世界の彼なりの解説という形にはなっているが、つまりはウェストールへのオマージュである。(宮崎駿はウェストールには会ったことがない) それとは別に、彼自身の生い立ちについて書かれた箇所があって、そこに「日本人ギライの日本軍大キライのおくれてきた戦時下の少年」と出てくる。偏屈王・宮崎駿の成り立ちを見た思いがする。

宮崎駿の力で売り込もうというやり方には、少なからず抵抗を覚えないではないが、ウェストールの作品そのものはとても良かったので、他の著作も読んでみたくなった。興味を持たれた方は、先ずは書店での立ち読みをオススメする←おいおい

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コメント

お久しぶりです!
サッカー以外(と、のだめ)の話題でコメントが書けるとは!!と思いながら書いております(^0^)

ロバート・ウェストールの作品は高校生の頃に出会い、それ以来すごく好きで、大学の卒論のテーマにも扱ったほどです。
本当にどの作品も素晴らしい世界が繰り広げられます。

オススメは「弟の戦争」ですが、これは精神的に元気な時に読まれた方がいいかもしれません。
元気がない時に読むと、精神的にきついかもしれません(;;)
お暇な時にでもぜひぜひ読んでみてください☆

投稿: くろ | 2007.03.30 21:26

>くろさん、コメントありがとうございます! お返事遅くなって、すみません。

いやぁ、身近(?)なところから反響があると嬉しいですね。しかし、くろさんがウェストールを卒論のテーマにされるほどのファンとは知りませんでした。オススメの「弟の戦争」、レッズが連勝街道を走り始めた頃に読んでみようと思います(笑)

投稿: yuji | 2007.04.05 01:00

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