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「それでもボクはやってない」~冤罪エンターテインメント(なわけない)

それでもボクはやってない」(周防正行監督、3月2日 MOVIXさいたま)

周防正行監督久々の新作であるが、どういうわけか巷の評判があまり聞こえてこない。微妙な不安を抱きつつ出かけてみたのだが、いろんな意味で予想を裏切る出来映えであった。

ストーリーは既に周知されている通り、至って単純。主人公の加瀬亮が痴漢に間違われるところから、警察での取り調べ、本人の否認、留置所での拘置、検察取り調べ、以下あれやこれや(順不同)で、起訴、裁判、判決と話は進む。ふぅ。周防監督らしく軽妙なタッチで拘留生活が描かれたりするあたりは、まだクスリと笑いながら見ていられるのだが、起訴から裁判へと話が進むにつれ、映画はどんどんドキュメンタリー色を強め、エンターテインメント性は希薄となっていく。エンディングに至っては、カタルシス皆無。驚いた。

恐らくこの映画には、監督自身が抱いた日本の司法制度への興味が、疑問から驚き、そして最後は怒りに変わっていく過程が、そのまま反映されているのだろう。そのせいか、映画としての方向性がイマイチ定まらないのが惜しい。が、これはこれで仕方ないのかもしれない。

「瓜田に沓を納れず李下に冠を正さず」という教訓の切実さが、とことん身に沁みる。大変な労作にして、深刻な問題提起の作である。まさしく文字通りの問題作。(★★★★☆)

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» バルトってなんだっけ [CLASSICA - What's New!]
●ウチから近くの映画館では時間が合わず、しょうがないので歌舞伎町の映画館で「それでもボクはやってない」(周防正行監督)。痴漢冤罪を題材に、刑事裁判の99.9%が有罪になってしまうという日本の裁判制度のあり方を問う。「硫黄島」に続いてまたも加瀬亮のどんより曇った表情を眺めていたら、ワタシもつい気が付くと同じような顔になっていた。ああ、もう怖くて電車乗れない。だれにでも起こりうることを描いているのだから、どこも笑えない。冤罪の被疑者となる恐ろしさはもちろんのこと、視点を変えて裁判官や弁護人、検察官、だれ... [続きを読む]

受信: 2007.03.03 15:54

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