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「グロテスク」~悪意の物語

グロテスク 上
桐野 夏生著
グロテスク 下
桐野 夏生著

桐野夏生「グロテスク」(文春文庫、上下巻)を読んだ。主要な登場人物は三人。ほぼ全編の語り手である「わたし」と、姉とはまるで似ていない怪物的な美貌を持つその妹ユリコ、そして「わたし」の名門女子高での同級生和恵。

ユリコと和恵は容貌も性格も違い、その歩む道も全く違ったのだが、三十代後半にして二人が辿り着いたのは、同じ渋谷の街娼であり、二人とも時を置かず殺されてしまう。二人を知る「わたし」が、自分の半生を語りながら二人のことも語るのだが、これがもう悪意の塊。底意地の悪い、偏見に満ちたその語り口が物凄い。

「わたし」の一人語りでは公平さを欠くとばかりに、ユリコの「手記」と和恵の「日記」も紹介されるが、それらにも絶望と混乱、そして憎しみが溢れている。

和恵のモデルは、有名な「東電OL殺人事件」の被害者ということなのだろうが、それにしても「日記」に描かれる彼女の二重生活は凄まじい。やがて昼と夜に分かれていた生活が、徐々に夜に浸食されていく。娼婦の濃い化粧のまま、何日も同じ洋服で出勤し、トイレで昼食を食べ、会議室の机の上で横になって昼寝する「エリートOL」。想像するだけで寒気がする。

三人ともがグロテスクな人生模様を描いているのだが、いずれもがフィクションと言い切れない生々しさで迫ってくる。ここまで極端でなければ、ちょっと似た人というのは、いくらでもいるように思えてしまうのだ。そしてそんなグロテスクな女たちを金で買い、弄び、捨てるか殺すかする男たちもまた、グロテスクな存在なのだろう。

悪意に満ちた醜い物語を、例によって圧倒的な筆力で描き尽くした大力作。参りました。

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