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「白夜行」~真っ白な闇

白夜行
東野 圭吾著

文庫本を手にとってびっくり、文字通り圧巻の850ページである。(持ち歩くことを考えたら、分冊がありがたかったのだが、それはまあ、どうでもいい)

昭和48年(1973年)、大阪で起きた一つの殺人事件を発端に、その事件に関わった少女と少年の、その後の人生の物語。ストーリーの骨子は、かなり早い段階で推察できるのだが、そんな謎解きよりも、二人がそれぞれどちらの方向に向かって、どうやって歩いていくのかについての語りに引き込まれる。二人の成長と、彼らをめぐるエピソードには、その時々の世相が巧みに織り込まれ、まるで一種の大河ドラマのようだ。

語り方ですごいのは、作者が決して二人の心中に入り込まないことだ。エピソードは常に二人以外の視点で語られ、ぶれることがない。徹底して外部から描写される二人の姿と、少しずつ暴かれるその軌跡の、なんと苛酷なことか。作中、書名を暗示させる台詞が、二人の口から別の時間と場所で語られるのだが、表現の仕方こそ違うものの、同じ思いから出るその言葉は、あまりに哀しい。

ストーリーテリングの巧みさに加え、パズルの断片が埋まっていくカタルシスはあるものの、その全体像がなかなか浮かび上がってこないという構成の精緻さも、この作品の魅力だろう。恐るべき傑作である。

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