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「阿片王~満州の夜と霧」

阿片王 I
佐野 真一著

成毛真大絶賛の本書を読んでみた。

「満州」と聞くと、「ラスト・エンペラー」だとか「大地の子」だとかが思い浮かぶのだが、肝心の「満州国」そのものについては、かなり貧弱な知識しか持ち合わせていない。本書の著者の佐野眞一によれば、満州国建設で行われた実験が、戦後日本の行動成長の下敷きになっっているという。夢の超特急、合理的な集合住宅、完備された水洗便所、等々。

そういった実験的な人工国家としての表面とは別に、満州には地下深く根を張る人脈があるのだが、それは「阿片」を抜きには語れない。そして満州において、その阿片を一手に取り仕切ったのが、本書で探求される里見甫(さとみはじめ)という人物だった。

里見につながる人脈の凄さは、彼が昭和四十年に死去した際、遺された彼の子どもの奨学基金募集を呼びかける「発起人名簿」に見て取れる。岸信介、児玉誉士夫、笹川良一、佐藤栄作・・・ 彼らは皆、里見を媒介に、何らかの形で満州と阿片に係わっていたということだ。

本書はその前半部分で里見の半生と満州国の建設を語り、後半は彼につながる人物の中でも特に謎に満ちている、里見の片腕であった「男装の麗人」、梅村淳に関する取材の過程が語られている。

後半の、リアルタイムでの取材過程もスリリングで面白いが、やはり圧巻は前半の満州における里見の活躍だろう。阿片取引が生み出す莫大な利益が、満州国建設及び中国政府懐柔の直接的な資金になっていたとは、本書で初めて知った。

阿片による権益の獲得と並んで、里見は満州でのメディアを押さえた。(ここでは、電通の前身となった組織も絡んでいる) メディア・コントロールを実現したという意味でも、人工国家としての満州の効率性・先進性(その是非は別として)が良く分かる。

里見と共に満州のダークサイドを仕切ったのが、かの甘粕大尉である。本書では彼の登場は断片的だが、それでも要所要所に顔を出すあたり、満州を知るうえでは欠かせない人物なのだろう。

巨怪・里見甫は、自らが取り仕切った阿片によって、何万という中国人阿片中毒者を生み出した。一方で、当時のどの日本人よりも、中国という国を理解し、尊敬し、愛情をもって接していた。そんな複雑怪奇な里見像を、丹念な取材で描き出した佐野眞一の労作であり、第一級のノンフィクション作品である。

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