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「白いカラス」

白いカラス Dual Edition

「白いカラス」(ロバート・ベントン監督、レンタルDVD)

(ネタバレしないように・・・と思ったのだが、Amazonの作品紹介はおろか、映画そのものの予告編でも、キモとなる「秘密」がバラされているので、気にせずにレビュー書くことにする。気になる方は、本作観賞前には、以下は読まないほうがベターかと)


まあ、題名からなんとなく予測はつくのだが、大学教授のコールマン(アンソニー・ホプキンス)は、実は黒人家庭の出身なのだが、肌の色が白いために、自らをユダヤ人と称して、学歴社会を駆け上がってきた。その彼が、「言葉狩り」とも思える、「差別発言」への糾弾を受け、自棄になって教授職をなげうつところから、物語は始まる。

教授辞任を巡る混乱の中、妻はショックが原因で他界。天涯孤独となった彼は、大学を告発するために、隠遁中の作家ザッカーマン(ゲイリー・シニーズ)に告発記事の執筆を依頼する。同じ頃、コールマンは、謎めいた一人の女性ファーニア(ニコル・キッドマン)と出会い、恋に落ちる。だが、彼女には、しつこくつきまとう元夫(エド・ハリス)がいた・・・

映画は、このコールマンの挫折と絶望、そしてザッカーマンやファーニアとの出会いによる彼の再生と、彼が自らの出自を偽るに至った過去の物語を、平行して描いている。

原作はフィリップ・ロスの「ヒューマン・ステイン(Human Stain)」で、このタイトルは、映画の語り手であるザッカーマンが、一連の事件について書いた小説のタイトルということになっている。(Stainは映画では「傷」と訳されていたが、「染み」とか「錆び」とかいう意味もあるようで、むしろこれらのほうが内容に沿っているように思う)

愚かと言えば余りに愚かな、コールマンの若い日の決意が、結局は彼の人生を通して、「傷」(あるいは「染み・錆び」)となって残る。だが、傷を負っているのはもちろん彼だけではなく、ファーニアも、彼の元夫も、そしてザッカーマンも、皆それぞれの「染み」を持っているのだ。

傷を負った者達が触れ合う中で、少しずつ再生の道を辿る姿は、痛々しくも、感動的だ。だが一方で、自らの傷を、暴力的なやり方でしか解決できない前夫。ラスト近く、凍り付いた湖上で、独り釣り糸を垂れるエド・ハリスと、彼を訪ねたゲイリー・シニーズが会話を交わす場面が、美しく、切ない。

本作でのニコル・キッドマンは、実に素晴らしい。暗い過去を背負って、なかば自暴自棄に振る舞いつつ、コールマンとの逢瀬に、ささやかな幸せを見出そうとする・・・そんな女性を、見事に演じきっている。

役者陣は皆素晴らしいし、演出も手堅いが、残念ながら、映画自体は、いささか凡庸な仕上がりになってしまっている。演出上の問題か、コールマン以外の登場人物の過去は、台詞でしか説明されないのだが、それならそれで、あと少し時間を使って、一人一人の「思い」を描いて欲しかった。

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「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

原作は読みたいのですけど、あの厚さに恐れをなして(笑)
ロスは読みやすいので文庫本になれば、と思っているのですが。
シニーズ、よかったですね。

投稿: kiku | 2005.06.14 23:19

>kikuさん、コメント&トラックバックありがとうございます。
原作、僕も読んでみたいのですが、あの値段に恐れをなしております(笑) 文庫になってほしいですね。そういえば、海外文学(現代の)って、あんまり文庫にならないですね。売れないのかしらん? あ、ゲイリー・シニーズ、素晴らしかったです。あの「第三者」というか、「第2.5者」みたいなスタンスの取り方に感心しました。

投稿: yuji | 2005.06.15 00:13

TBありがとうございます。
こちらからもTBを……と思ったのですが、なぜかできませんでした(涙)。
この映画は、けっこう前に観たのですが、心に残る作品の一つです。
……まあ、アンソニー・ホプキンスの若い頃を演じた俳優が、あまりにもアンソニー・ホプキンスとは似ても似つかないところが、少し気にはなりますが。

投稿: ちょいハピ | 2006.05.04 19:37

>ちょいハピさん
ありゃ、TBできませんでしたか? うーん、なんかこのところNiftyが挙動不審なもんで・・・すいません。
アンソニー・ホプキンスの若い頃の俳優、確かに似てないですよね(笑) まあ、過去のエピソードは過去のエピソードってことで、許しておくことにします。

投稿: yuji | 2006.05.05 17:18

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» 『白いカラス』 [kiku's]
アメリカという病を彼らは象徴している。 それはフィリップ・ロスの生涯のテーマだ。 [続きを読む]

受信: 2005.06.14 23:16

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