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「サーチエンジン・システムクラッシュ」

宮沢章夫「サーチエンジン・システムクラッシュ」(文春文庫)を読んだ。

不条理爆笑エッセイでお馴染み宮沢章夫の、これが小説デビュー作ということである。表題作「サーチエンジン・システムクラッシュ」の他にもう一編、「草の上のキューブ」が収録されている。いずれも現代的な刺激に満ちた秀作である。

表題作「サーチエンジン~」のほうは、彼のエッセイをそのまま小説化したような話で、学生時代の友人逮捕の報に接した語り手(僕)が、次から次へと不条理な出来事に巻き込まれる様子が、時に粘液質に、時にクールに、語られていく。

これ以上説明しようがない小説なのだが、すごいのは、一連の爆笑不条理エッセイと同じ語り口なのにもかかわらず、そこで注意深く選ばれている言葉が、異様な緊張感を生み出していることだ。文中に突然、

「逃げる場所はもうどこにもありません」

なんて出てくると、その言葉が与える切迫感に、息が詰まりそうになるではないか。

何もかもが曖昧な中で、突如として鋭く響く言葉たち。笑っていいのか悪いのかわからないシチュエーション。せめて読者としては、夜の池袋を彷徨する「僕」に、置いて行かれないようにするしかない。

もう一編の「草の上のキューブ」は、ハッカー/クラッカーが進入しようとする「システム」のメタファーとして、ルービックキューブが出てくるところが秀逸。どこかにありそうな、それでいてどこにもなさそうな、不思議な響きの「方言」が、なんともいえないゆるゆる感を漂わせている。(あとがきにも書かれているが、これが書かれた2000年には、実はまだネットは今ほど盛んというか、簡単ではなかった。ネットへの接続も、まだダイヤルアップがメインだったと思う。ここに出てくるハッカー達の姿が、なんとなく牧歌的なのは、そのせいか)

エッセイと同じく、にへらにへら笑って読むもよし、一種のホラーとして、怖がって読むもよし。いかようにも味わえる一冊である。

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