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「ホテル・ニューハンプシャー」

J.アーヴィング「ホテル・ニューハンプシャー」を読んだ。

実はこの本、文庫化されてすぐ買ったのだが、読み始めて十数ページで挫折してしまい、それ以来、ずっと本棚の肥やしになっていた。(文庫の奥付を見たら、平成元年発行となっていた。うぅ) しばらく前に、テレビで放映された映画を観たので、改めて取りかかってみようと思った次第である。

で、読んでみたら、あらら、これはやたらと面白いではないか。何故、最初に読んだ時に挫折したのか、今となっては良く分からないが、恐らくは、突拍子もない設定と、淡々としているようで、少々クセのある語り口が取っつきにくかったのかもしれない。それと、これは今回読んで感じたのだが、面白くて一所懸命読んでる割に、全然ページが進まない(笑)  そういえば、「ガープの世界」も、なかなか読み終わらなかった記憶があるなぁ。

それと、今回は先に映画を観ていたので、小説で描かれる世界が、かなりイメージしやすかったということもある。(逆に言えば、映画がいかにうまく、原作のエッセンスを伝えていたか、でもある)

語り手の次男が、自分たちの両親の馴れ初めから語り起こし、そのままほぼ時系列に、一家が経験する様々な事件を描く手法は、ほとんどそのままディケンズだ。小説の中心に、レイプという今日的なテーマを持ち込みながらも、アーヴィングはやはりディケンズ的な意味での「小説の復権」を訴えているように思える。何より、著者の「物語る力」というのは、やはりすごいものがある。

大小の災厄を主人公に一家に与えながら、アーヴィングは主人公にこう語らせている:

いつなんどき、吹き流されてしまうかしれない危険があるにもかかわらず、あるいはおそらく、その危険があるからこそ、ぼくたちは落ち込んだり、悲しんだりしてはいられないのだ。この世の仕組みがどうであろうと、何でもかんでも皮肉な冷笑的な態度で眺める理由にはならないのだ。

ただの脳天気ではない、「痛み」を知る人間の楽観主義が、ここにはある。

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