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「さらばわが愛 覇王別姫」

さらば、わが愛~覇王別姫

以前から観たかったこの作品を、ようやくレンタルDVDで観たが、期待に違わぬ傑作だった。

遊郭の母親から、ほとんど捨てられるように、ドサ回りの京劇一座に預けられた主人公・小豆子と、彼を庇護し、共に厳しい稽古に耐えながら、友情を育む相棒・小石頭。長じて、小豆子は京劇の女形役者・程蝶衣(レスリー・チャン)、小石頭は男優・段小樓(チャン・フォンイー)の名コンビとして成功するのが前半。後半は、彼らが役者としての絶頂期にあった頃から始まった日中戦争、そして中国の勝利から、国民党軍の支配、さらにはその国民党に取って代わった共産党の支配と、文化大革命といった、中国の現代史に翻弄される彼らの悲劇が描かれる。

とにかく、冒頭の悲惨なエピソードから始まって、まったく画面から目が離せない。レスリー・チャンの妖艶な美しさ、歌舞伎の「見栄」に似た京劇の所作の数々、全てのシーンが重厚で無駄が無い。

日本軍の支配下におかれる中国はもちろん悲惨だが、少なくとも彼ら京劇役者にとっては、戦勝後の国民党軍支配や、それに続く共産党支配と文化大革命のほうが、より悲惨な災厄であった。マナーのかけらもなく観劇する国民党軍兵士に向かって、小樓が語りかける、「日本軍でさえ、そんな真似はしませんでした」という言葉が、とてつもなく重く響く。

印象的なシーンの数多いこの作品だが、特に強烈だったのは、少年時代、一座に見学に来たスカウト相手に、セリフをトチってしまった小豆子に、「お仕置きだ」と小石頭がキセルを突っ込む場面だ。お仕置きのあと、口の端から血を滴らせながら、忽然と何かを悟ったかのように、見事にセリフを言い切る小豆子。この瞬間、彼らの成功は約束された。悲惨さと美しさが同居した、見事なシーンだった。

小樓の恋人として菊仙(コン・リー)が登場するあたりから、少しだけ話の運びが乱れるが、すべては悲劇の成就のための必然であった。

「絢爛たる悲劇」とでも形容すべき、傑作である。

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