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「ラスト・ドリーム」

ラストドリーム
志水辰夫著

このところ、「抒情派」としての短編集ばかり出版されていたような気がする志水辰夫の、久しぶりの長編。とはいえ本作も、「抒情派」としての面目躍如といった趣の作品である。

ミステリアスな冒頭から、不思議な場所での不思議な人々との出会い、そしてそこから始まる物語を中心に、失った妻との思い出を随所に織り交ぜるという、凝った構成となっている。400ページに及ぶ長編だが、文章の巧さもあって、すぐに読み終えてしまった。

しみじみと切ない、思い入れに溢れた一種の挽歌のような作品ではあるが、僕としては、正直なところあまり感銘を受けなかった。確かに「巧い」と思うのだが、ここしばらくの作品に共通する、ある種の自己嫌悪の匂いが、どうしても好きになれない。自分を卑下したり責めたりするのは構わないが、それだけでは余りに救いが無いではないか。

著者の初期作品の登場人物達は、なんらかの影を背負い、一見自らを捨ててかかっているポーズを取りながらも、どこかに「矜持」とか「誇り」を残していたのだが、そんな造形はもはや無い。

本筋とは関係ない、主人公の海外でのエビ養殖事業をめぐるエピソードが、かつての冒険小説群を思わせるテイストで、テンポ良く面白く読めたのが収穫か。当人にはもうその気は無いのかも知れないが、「飢えて狼」や「裂けて海峡」にシビれたファンは、いつまででも待っているのだ、あの感激に再会できる時を。

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最新長編「約束の地」は、久しぶりのミステリのようだ。大いに期待したい。

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