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「男坂」

男坂
志水辰夫著

かつての「冒険小説の雄」(及び、「稀代のへそ曲がり作家」・笑)から、今ではすっかり「叙情の名手」になってしまった志水辰夫の、昨年12月刊の連作短編集である。

連作といっても、登場人物や背景に共通点があるわけではないのだが、扱われている世界というか状況に、似通ったものがある。

どのエピソードでも、特に大きな事件が起こるわけでもなく、日常のあるシーンを、淡々と切り取ったような作品が並んでいる。ほとんどの場合、謎(というほどのものではないが)は謎のままだし、オチがついて終わるわけでもない。全編に漂うのは、確かに「哀愁」だが、これが則ち「叙情の名品」なのかどうか。

本書のタイトル「男坂」についての説明はないのだが、各作品を読むと、それが「人生の下り坂を歩く、男達の後ろ姿」とでもいう風景を描いているように思える。そして、それらに登場するのは、当世風の分け方でいえば「負け組」に分類されてしまうであろう、いろんな意味で「中途半端」な男達である。

味わい深い佳品・・・と言えなくはないが、正直、読んでいてあまり楽しくはない。下り坂(あるいは「負け組」)の風景を描くにしても、「いまひとたびの」や「きのうの空」あたりが限度だろう。著者が再び、冒険小説の新作で輝くことはあるのだろうか?

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・・・などと書いたのだが、「ラストドリーム」と「約束の地」という長編が、相次いで出版されていた。まだ手に入れていないが、読むのが楽しみである。

それと、しばらく前から、新潮社で初期作品が文庫化され出した。衝撃のデビュー作「飢えて狼」や、長編第二作にして、いわゆる「志水節」が炸裂する「裂けて海峡」等、読みのがしている方は、この機会に是非。

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「男坂」の巻末に、著者ホームページの紹介があったので、紹介しておく。(「志水辰夫めもらんだむ」) 意外なほどに親しみやすく、サービス精神満点のサイトである。ファンの方は、要チェック・・・って、僕が知らなかっただけかな??

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