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「彼岸過迄」

「彼岸過迄」読了。(ちくま文庫版全集第6巻所収)

「三四郎」「それから」「門」が、いわゆる「前期」三部作で、この「彼岸過迄」から「行人」「こころ」と続くのが、「後期」三部作・・・だそうだが、「彼岸過迄」を読み始めてみると、ちっともそれらしくない。

漱石が大病を患った後、復帰第一作となったのがこの作品なのだが、漱石としては、少々気軽な気持ちで、連作中編みたいなものを書くつもりだったようだ。その気分通り、前半のエピソードは、軽めの冒険譚のような趣であったり、ある幼児の死を描いた痛切な物語であったりと、実にいろんな側面が見られる。

それが後半、主人公たる敬太郎の友人・須永の独白から、突如としてシリアスな恋愛小説というか、心理小説みたいな物語が語られていく。

この、須永と彼の従姉妹・千代子の物語は、まさに前期三部作のテーマをなぞったような話であり、須永の一人語りの形式を取りながらも、実に鮮やかな心理描写が展開されていく。

ここでも、結局は須永のエゴイズムの問題が描かれているわけだが、漱石自身は、恐らくは当初そんな話を書くつもりは無かったに違いない。筆の流れるままに紡いでいった物語が、結局は彼の問題意識に辿り着いてしまったというのは、作家の業とでも言うべきだろう。

「こころ」を知っている読者としては、漱石が毎回同じテーマを扱いながらも、徐々に作品としての質を高めていくのが伺えて、実に面白い。

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