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「黄金の島」

真保裕一「黄金の島」(講談社文庫版)を読んだ。

※ネタバレはしないが、未読の方は、できれば本作を読んでから、以下をお読み戴きたい。


ベトナムの貧しい村に生まれ育った若者達が、豊かな明日を夢見て、サイゴン(ホーチミン)の街で必死にシクロを漕ぐ。そんな彼らからさえ、なけなしの金をむしり取ろうとする、元締めや汚職警官(公安)。様々な出来事が重なり、彼らは少しずつ追いつめられて行く。

いっぽう、なし崩し的にヤクザの世界に足を踏み入れてしまった日本の若者は、組織に煙たがられ、バンコクへ追いやられてしまうが、逃避先に思えたバンコクから、彼はさらに逃げなければいけない羽目に陥る。

そんなベトナムの若者達と、日本の若いヤクザが、運命的な出会いに導かれ、いつしか協力しあって「黄金の島」を目指すことになる・・・

こんな粗筋を紹介しなくても、だいたいの展開は先読みできる。しかし、この作品の面白さは、予測されうる展開に、どうやって話を運んでいくのか、という語りの巧さにある。

三人称多視点の手法ではあるが、各場面の視点にブレがないので、まさに眼前で物語が繰り広げられるかのような、迫真のストーリーテリングであって、読み出したら止まらない。行間から、作者の「熱」がにじみ出してくるようで、実に「熱い」作品に仕上がっている。

紆余曲折はあるものの、ほぼ予定調和的に進んできた物語は、終盤で意外な展開を見せる。今までの真保作品からは考えられない展開なのだが、読み終えてみると、やはりそれが正しいストーリーであることに納得させられ、思いがけず爽やかな読後感を得ることになる。

余談だが、僕自身、8年ほど前にベトナムを旅行した。4日ほどの駆け足旅行だったが、作中にも出てくる市場の喧噪や、夜毎市中を走り回るバイク、そして若い女性達の清楚なアオザイ姿が、読みながら思い浮かんできた。ベトナムには、是非もう一度行ってみたい。

それはともかく、作者の思い入れがたっぷり詰まった、極上のエンターテインメントである。

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