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「虞美人草」

「虞美人草」(ちくま文庫版全集第4巻所収)を読んだ。

恥ずかしながら、この作品も初読だったのだが、この小説に対して今までに抱いていたイメージが、まるで勘違いだったのが分かった。

「二百十日」を連想させる冒頭から始まり、大きく三つの流れが平行して語られる。少しずつ登場人物の輪郭が明確になるにつれ、話の筋そのものもはっきりしてくるのだが、地の文のくどいばかりの美文調といい、展開の遅さといい、読むのにやたらと時間がかかってしまった。

少々類型的な人物の造形や、いささか旧弊な価値観によった、勧善懲悪とも読めるような筋立て等、やはり習作の域を出ていないのかもしれない。とはいえ、後の大作群に共通する「エゴイズム」というテーマは、既にここでもはっきりと提示されている。

正直、かなり退屈なストーリーではあったが、終盤の大団円に向けての展開は、なかなかスリリング。やや強引な解決には、さすがに疑問が残るが、少々シニカルな最後の一行が、思いがけない余韻を残す。

解説によれば、ここまでの作品で見せた、美文調の語りの集成であると同時に、以後の「文豪」への出発点になる作品とのことだ。ここから先の作品群を読むのが楽しみになってきた。

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