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「野分」

ちくま文庫版「夏目漱石全集3」、「野分」をもって読了。

「野分」は初読だったのだが、いや、面白かった。

解説にあるように、「思想的な内容を持った」、「維新の志士の如き烈しい精神で」作られた文学である、と僕も思う。

むろん、そういう意気込みで書かれた作品としては、最初の部類の一作なので、一個の作品としては、やはり少々未熟であろうかとも思う。

それでも、作品の根底に、漱石の「思い」みたいなものが流れているのを、なんとなく感じ取れるような気がする。

主人公(?)の演説シーンは確かに圧巻だが、むしろそれ以外の地の文における、シニカルでクールな視線が、この作品での漱石の姿勢として、確実に伝わってくる。

「野分」を経て、彼はどんな作品を生みだしていくのか。次巻が楽しみである。

ところで、くだんの演説シーンでの、印象に残った一節。

家に在っては父母を軽蔑し、学校に在っては教師を軽蔑し、社会に出でては紳士を軽蔑している。これらを軽蔑し得るのは見識である。しかしこれらを軽蔑し得るためには自己により大なる理想がなくてはならん。自己に何らの理想なくして他を軽蔑するのは堕落である。現代の青年は滔々として日に堕落しつつある。

自己の理想なくして、徒に他者を軽蔑する人間の、なんと多い現代であることか!

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